鴨居羊子勉強会 Vol.4
前回4月2日に引き続き鴨居羊子(1925-1991)さんの勉強会を6月11日(日)に開催致します。
今回は「鴨居羊子の初期文章を読み直す」という内容で会を進めてまいりたいと思っています。
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日時:2023年 6月11日 日曜日
(14:00開始16:00終了を予定しています。)
場所:GALLERY ZERO
大阪市西区京町堀1−17−8 京ビル4F
電話:06-6448-3167
E-mail:g-zero@art.email.ne.jp
定員:8名
参加費:3000円(茶菓子付き)
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「下着文化論」鴨井羊子著 、1958年凡凡社刊。新聞記者を経て、下着デザイナーとなった鴨居羊子(当時33歳)が、因襲化し停滞していた日本の下着文化に対して挑戦的な持論を展開した独創的な下着文化論。
"Underwear Culture Theory," written by Kamoi Yoko and published by Bonbonsha in 1958. This is a book by Kamoi Yoko, a former newspaper reporter turned lingerie designer, who presents a challenging theory of underwear culture based on her original ideas about Japanese underwear culture, which until then had been stagnant and had been influenced by traditional practices.
「のら犬のボケ」鴨井羊子著、1958年東京創元社刊。写真撮影は土門拳。新聞記者時代に街角で出会くわした数々ののら犬との関わりについて、この本が刊行される6年前から書きためられていたエッセイ集。”ボケ”(後にメスとわかってからは”ボケ子”)は鴨居が名付けた一匹ののら犬の愛称。
"Stray Dog Bokeh” written by Kamoi Yoko and published by Tokyo Sogensha in 1958, photo by Domon Ken. This is a collection of essays written six years before this book was published about her relationship with stray dogs she encountered on a street corner when she was a newspaper reporter.
第13回 Table Osaka 文楽鑑賞会
夏休み特別公演(第163回文楽公演)のご報告
2021年8月1日(日)
第2部「生写朝顔話」
- 明石浦船別れの段
- 薬売りの段
- 浜松小屋の段
- 嶋田宿笑い薬の段
- 宿屋の段
- 大井川の段
秋月家の娘深雪が宇治川の蛍狩りで見染めた阿曾次郎を追って数奇な運命をたどる恋物語。
幕開け、月影美しい明石浦の船上、琴の調べにより偶然再会を果たしたのも束の間、風の悪戯か、それぞれの船が再び離れ離れに。深雪は、遠ざかる阿曾次郎の船へと「露のひぬ間の朝顔に、照らす日かげのつれなきに」と書かれた扇を投げ込みます。宇治川での別れの際に阿曾次郎が深雪に認めた唱歌でした。依然心は阿曾次郎から離れずもままならない深雪は、恋は盲目とばかりにその後家出、労苦を重ねた末、目を泣き潰し、朝顔と名乗り、破れ三味線を弾いて露命を繋いでいきます。
宿屋での再再会とまたの別れ、大井川での深雪の開眼という大団円と進んでいきます。
途中「薬売りの段」では、不動参りの帰路、笑い薬にお互いの距離を詰め寄るお百姓四人衆に「密です」の警告板を出すあたりは、流石に世情を鑑みた大阪人的くすぐりで楽しませてくれました。また、ここで出てくる笑い薬が、後の「宿屋の段」で、阿曾次郎の命を狙う悪臣の策謀を露見させる蜜の役目も担っています。白目になってしまった深雪(=朝顔)の一途で繊細な心情が読み取れ、哀愁を誘う勘十郎さんの人形遣いが物語を引っ張っていきとても見応えがありました。
「露のひぬ間の朝顔も、山田の恵みいや増さり、茂れる朝顔物語、末の世までも著し」の唱歌で幕を閉じます。(吉)
第12回 Table Osaka 文楽鑑賞会
4月文楽公演のご報告
2021年4月11日(日)
第2部 「国性爺合戦」
- 平戸浜伝いより唐土船の段
- 千里が竹虎狩りの段
- 楼門の段
- 甘輝館の段
- 紅流しより獅子が城の段
17世紀の明清大動乱の時代を背景に、近松門左衛門がメインキャラクターの和藤内(わとうない)を台湾鄭氏政権の祖、鄭成功(1624-1662)をモデルにして書き上げた人形浄瑠璃「国性爺合戦」。
舞台は、肥前国(長崎)の平戸浜で貝採りをしている和藤内(明国から追放され日本に渡っていた鄭芝龍の息子)とその妻小むつが、その干潟で蛤と鴫が揉み合い争う様を目にし、当時覇権を争っていた明国と韃靼国(モンゴル民族の王朝)の双方を一挙両得する軍法の奥義を悟るところから始まります。この導入部の「漁夫の利」を引用した比喩的効果が、後の物語全体の下敷きになり、登場人物それぞれが置かれた異なる立場から生じる義理と人情を絡めた抜き差しならない心理的葛藤をも暗示するかのように効いてきます。そして、和藤内は、義理の弟である甘輝を味方につけ、韃靼王征伐=明国再興を目指すという段切れへと繋がっていきます。
今回の公演でも、劇場の座席は、新型コロナ感染予防のため間隔を開けて着席する形が取られ、決してやりやすいとは言えない環境の中、それでも安定して公演をこなされる太夫、三味線、人形の部の演者の方々には、大変勇気付けられる観劇の機会となりました。
個人的には、甘輝館の段での、この季節の乾いた空気に乗った鶴沢清介さんが弾く三味線の響き、それに乗った豊竹呂太夫さんの個性的な語り口、後半のストーリーを引っ張る甘輝の妻、錦祥女を操る吉田一輔さんの艶を感じさせるしなやかな人形遣いが、とりわけ印象的でした。(吉)
第1回 Table Talk 「鴨居羊子(下着デザイナー)の生き方」 こぼれ話
津志本貞 : 司馬遼太郎氏が「私どもの誇り」と讃えた人
文化学院を卒業後、戦前は瑛九のデモクラート美術家協会という前衛芸術グループに参加。戦後は八丈島近くの無人島に赴き、自ら流謫の生活を送る。その後実家に戻り、自給自足の生活を始める。小麦を育てパンを焼いたり、羊を飼ってチーズやバターを作るもやがて薔薇を育て始め、バラの専門家となりバラ園を開く。大阪中之島のバラ園の創設にも関わる。ご家族によるバラ園が今も泉南にあり、またロイヤルホテルに薔薇専門の花店「コアン ド ローズ」を営業されている。当時津志本のバラ園は文化サロンでもあり、司馬遼太郎・今東光・田辺聖子・黒岩重吾・開高健・大宅壮一・岡本太郎・鴨居羊子など錚々たるメンバーが集っていた様である。津志本の薔薇の写真集に司馬は「私どもの誇りである人として」と題した文章を寄せている。他に土井勝に最初の料理教室を開かせたり、八木一夫の個展を手伝う等、関西でも有数の趣味人・パトロンと言えるであろう。戦時中は揚子江の船上でオペラ歌手三浦環に、一対一で歌を聴かせてもらうというエピソードもあるらしい。また画家梅原龍三郎の絵の薔薇を賞賛したらしいのだが、晩年の梅原の薔薇は津志本本人の薔薇であったとも言われている。誠に懐の深い大人が大阪にいたのだと思う。
・下記勉強会は終了しております。
下記勉強会にご参加頂きました皆様、有難うございます。お陰さまで開催時間をかなり超過して、内容の濃い勉強会となりました。 Table Talk は講師の方のお話を聞くだけでなく、その後の交流会で講師を交えた参加者との対話により参加者各人がテーマについての考察を深めて行く事に主眼を置いています。その為に少人数の会となっております。とは言いましても堅苦しいものではなく、テーマにご関心をお持ちであれば基礎知識なしでも楽しんで頂けると思います。昨日も話題は鴨居さんだけでなく、様々に展開して行きました。そして「鴨居羊子に関してまだ話したりない事がある!」という訳で、また次回同じ勉強会を開催する事になりました。次回開催日が決まりましたら、またこのホームページでお知らせさせて頂きます。その時は是非皆様、ご参加下さいませ!!よろしくお願い致します。
Table Talk ( 勉強会 ) #1「鴨居羊子(下着デザイナー)の生き方」のご案内
ゲスト 室井絵里氏(むろいえり/インディペンデントキュレーター・美術評論)
日時 2019年 12月21日(土) pm 5:00 − 7:00
(講演:pm 5:00 − 6:00 交流会:pm 6:00 − 7:00
※ 交流会では飲み物とおつまみを用意いたします。)
人数: 10人程
参加費: 3500円
会場: Gallery ZERO 〒530-0003 大阪市西区京町堀1-17-8 京ビル4F
第11回初春文楽鑑賞会のご報告
2021年1月3日(日) 鶴沢政治文化功労者顕彰記念初春文楽公演
第2部碁太平記白石噺:浅草雷門の段/新吉原揚屋の段、義経千本桜:道行初音旅
本年もどうぞよろしくお願い致します。
今回も新型コロナ予防対策を取りながらの公演です。手の消毒と検温を済ませ、文楽劇場に入場致しました。恒例の手ぬぐい撒きはございませんでしたが、初春らしい設えで新年を寿いでいました。
今回観劇した碁太平記白石噺は、文楽には珍しく江戸にて創作され、初演された作品です。ですので場所は江戸吉原と東北伊達領内となります。今回の場面はタイトル通り江戸の浅草雷門と新吉原が舞台です。お話の基本は仇討ものです。父の敵を討つために田舎娘おのぶが、先に遊女奉公に出た姉に会いに江戸に出、姉遊女宮城野に再開するまでが展開されます。「浅草雷門の段」は大道芸人どじょうの口上から始まります。現在のコロナ禍の話題を取り入れた南都太夫さんの軽妙な語り口から始まるこの場面は、明るく滑稽な「チャリ場」であり、楽しく演目に導かれた次第です。続く奥は御大咲太夫さんの骨太の語りで痛快などじょうの活躍が語られます。なのですが、咲太夫さんの饒舌な語りは、まるで真綿の高級布団に包まれたような心地よさで夢現つ、お正月から贅沢な初夢を見させていただきました。「新吉原」はこれも御大呂太夫師匠、おのぶの東北弁を精妙に語られたのは流石、情感豊かな語りに酔った次第です。義経千本桜「道行初音旅」はまことに美麗な演目でした。鶴澤清治さん一門による華やかで浮き立つような三味線の音は、心に響きわたる清々しい美しさ。眼福・耳福満載の第2部公演でした。この2部公演で、改めて文楽界が世代交代を促進していることを感じました。呂勢太夫さん・織太夫さんの浄瑠璃、人形なら狐といえば勘十郎さんの十八番でしたが、今回は狐忠信は玉助さん、静御前は一輔さんが遣い、それら全てをまとめて清治さんが寿いだ、そんな新たな道行がますます栄えますことを祈念し、私たちも微力ながら共に歩みたいと思った次第です。
第11回 Table Osaka 文楽鑑賞会 初春公演の募集は締め切らせて頂きました。ありがとうございます。
第11回 Table Osaka 文楽鑑賞会
初春文楽公演
1月3日 (日) 第2部 碁太平記白石噺:浅草雷門の段/新吉原揚屋の段、義経千本桜:道行初音旅
1月17日 (日) 第3部 妹背山婦女庭訓:道行恋苧環/鱶七上使の段/姫戻りの段/金殿の段
料金:5000円
募集人数:6名
12月5日までにご連絡ください。
今回は2回開催させていただきます。ご参加いただけます方はご希望日を記入の上、tableosaka@gmail.com までお申し込みください。
第10回 文楽鑑賞会のご報告
2020年11月7日 ( 土 ) 錦秋文楽公演 第2部 午後2時開演 新版歌祭文:野崎村の段、釣女
文楽再開!! 9ヶ月ぶりに大阪に文楽が戻ってきました。なんと長い休演であったことか。その何もなかった月日を思い、ただただ文楽劇場に居ること、文楽を体験できることが嬉しくて、それだけで心が満たされてしまったというのが正直な感想です。でもそれではご報告にならず、公演内容について少しずつ思い出しながら簡単に感想を記していきます。今回から、コロナ対策で夏文楽同様3部構成になっています。各2時間から3時間の公演時間だと思って下さい。各公演が名作名場面ですので、入門としては殊にお勧めですよ。という訳で今回どの公演にするか私達は悩んだのですが、物語の展開が分かりやすい第2部新版歌祭文にしました。詳しい内容は解説書または床本をご覧頂くとして、見所は久松の野崎村の実家でのおみつ・お染・久松の三角関係と、久松の養父久作の役所と言えるでしょう。お染に嫉妬するコミカルで可愛いおみつ、その後の「ほんまにそれであんたはええんか?」と言いたくなる様な、あまりにも物分かりの良いおみつの切なさがこの段の中心です。今回は平成21年春公演以来となるおみつの母親が登場する形での上演との事ですが、残念ながら比較できる経験・記憶を持ち合わせていないので、普通に楽しませてもらいました。また今公演で唯一お染の母お勝役で登場される簑助師匠が体調不良のため当日お休みに。残念でしたが代役に勘十郎さんが登場。勘十郎版お勝は凛として、大店の女将然とした見事なものでした。語りでは、前を務める呂勢さんの声を昨秋の休演以来1年ぶりに聴く事が出来たので一安心。切りを務めた御大咲太夫師匠の、久作の心情を有無を言わさぬ納得の語りで体感できて大満足でした。続いて釣女。狂言「釣針」を歌舞伎に、さらに文楽に移した作品とのこと。藤太夫・芳穂太夫ご両人の豊かな声量の語りが、コミカルな狂言の世界を文楽劇場に繰り広げてくれました。浄瑠璃だけでも、琵琶法師に能・狂言と語り芸の総体のような奥深さ。この道行はまだまだ続きます!!
初春公演は1月3日日曜日から24日日曜日まで開催されます。演目は、1部が菅原伝授手習鑑(車曳の段/茶筅酒の段/喧嘩の段/訴訟の段/桜丸切腹の段)、2部が碁太平記白石噺(浅草雷門の段/新吉原揚屋の段)・義経千本桜(道行初音旅)、3部が妹背山婦女庭訓(道行恋苧環/鱶七上使の段/姫戻りの段/金殿の段)と華やかな名場面集です。鑑賞会の日が決まりましたらご報告させていただきますので、よろしくお願い致します。
第9回 文楽鑑賞会のご報告
2020年 1月11日 ( 土 ) 初春文楽公演 第2部 午後4時開演
加賀見山旧錦絵 ( かがみやまこきょうのにしきえ ):草履打の段/廊下の段/長局の段/奥庭の段
明烏六花曙:山名屋の段
初春文楽第1部は六代目竹本錣太夫襲名披露狂言というお目出度い公演でしたが、私達は今回初めての方もいらしたので、浄瑠璃太夫のバリエーションがある2部公演を鑑賞しました。「加賀見山旧錦絵」は昨年全段公演した「仮名手本忠臣蔵」の女性版と言った内容でした。あらすじは、お局岩藤が町人出身の中老尾上を散々貶したあげく自死に追いやり、尾上の召使いお初がその敵を討つといった内容です。各段太夫が個性的な語りを披露してくれます。ことに長局の段では、千歳太夫が主思いのお初の真情をかえらしく情感込めて語ります。その後半藤蔵のかけ声と共に、主尾上の自害により烈女となったお初の激情を織太夫が激しく語るのです。藤蔵のすばやい桴捌きと迫力、かぶさる様な織太夫の声量豊かな語りにはゾクゾクしました。最後奥庭の段ではお初の立ち回りがあるなど楽しめる内容でした。登場人数も少なく、人間国宝和生の哀愁のある尾上、普段男の人形を遣う玉男の冷徹な岩藤、何より心根の優しいお初と烈女お初を使い分けた勘十郎の技量には感服しました。「明烏六花曙」は、情と切なさと滑稽味が合わさった内容です。呂太夫の懐の深い語り、澄んだ高音は、初春文楽を締めくくるに相応しいものでした。昨秋から今回も病気休演の呂勢太夫のことは気に掛かりますが、次回4月公演での素晴らしい語りを心待ちにしたいと思います。4月文楽は11年ぶりの「通し狂言 義経千本桜」とのこと。令和の文楽も盛りだくさんで楽しませてもらいます。
昨今ビジネスマン向けの西洋美術史やアートの本の刊行や講演が盛んですが、日本人のビジネスマンならそれよりも文楽をご覧になっては如何でしょうか。海外の方との話題としては、ぴったりだと思います。彼らはきっと文楽について語るあなたを、知的で有能な日本のビジネスマンだと確信することでしょう。ちなみに文楽の海外公演、昨秋のニューヨーク公演を含め盛況とのことです。